組織や社員全体に良い影響を与えるはずの人事評価が、実は事前に決まっているかのような結果になったという人がたくさんいます。
そこで本記事では人事評価の実態を調べ、人事評価が出来レースかどうか見抜くポイントと、人事評価から転職を考えたときの対策までご紹介します。
人事評価について
昇進に影響する!人事評価の本来の目的とは?
人事評価制度は社員を公平に評価することで、組織の活性化や社員のモチベーション向上を目的としています。また実績や人物像から公平に評価し、人材育成や人材配置の効率化も可能にします。
人事評価制度のルール「人事評価の5原則」とは
人事評価は通常であれば、人事評価の5原則に基づいて行われます。制度における重要なポイントは以下です。
- 公正な評価(人事評価制度が目的を達成できるように設計され、運用されること)
- 評価基準の明確化(評価対象や評価尺度を明らかにすること)
- 評価基準の理解(評価基準が理解されていること)
- 評価基準の遵守(評価基準に沿って評価すること)
- 評価責任の自覚(評価者が評価の目的と、評価を受ける人に大きな影響を及ぼすことを理解していること)
人事評価はどうやって決まる?評価項目について
人事評価は基本的に「業績」、「能力」、「情意」の3つで査定されます。
業績評価
売り上げや利益に対する貢献度など、評価基準や評価項目が明確。一定期間でどれだけの成果を達成できたか客観的に評価されるため、評価を受ける側も納得を得やすいのが特徴です。
能力評価
与えられた仕事を行うときの知識やスキル、保有する資格や能力がどれだけ発揮されたか、評価されます。
能力評価は人材育成やキャリア育成に影響を与えるため、評価項目として取り入れられています。能力評価で高い評価を得られる場合、社員はさらなるスキル向上のため、自発的に取り組むようになるからです。
情意評価
社員の仕事に対する姿勢を評価する項目です。協調性や責任感など、業績評価や能力評価では測れないポイントを評価できます。
出来レースの人事評価がもたらす悪影響や問題点
人事評価が退職する原因になる
- 信頼性の低下
- 向上心や自発性の喪失
- モチベーション低下
- 部署やチームの連携が悪化するなど、生産性の低下
など、人事評価が出来レースになれば大きな影響は避けられません。
人事評価が出来レースで昇格試験に落ちた場合、実力が正当に評価されていないことがすぐわかります。社員は喪失感を味わい、企業に対する信頼が失われるため、退職や転職につながりやすいです。
また社員のモチベーションが下がると、人材育成に悪影響を及ぼすことがある上、チームの連携が悪化して生産性が低がるため、組織全体のパフォーマンスにも影響を与える可能性もあります。
人事評価が出来レースになる背景とは
人事評価が出来レースになってしまう背景には、以下の原因があげられます。
- 評価基準が不透明で不明瞭
- 上司や人事評価をする担当者の主観が入る
- 社内の人間関係や派閥による影響など
また評価に見合った給与を支払うことが難しい企業の場合は、人事評価が出来レースになるようです。
簡単に高い評価が出てしまうと、社員の向上意欲をそいでしまいます。そのため5段階や7段階評価を採用して「最も高い評価」は滅多につかない仕組みにした方が、色々と企業にとって都合がよいのです。
「最高の評価」が出ない謎|HRpro
人事評価の実態は?出来レースと感じた人の声をまとめてみた
人事評価がみんな同じになった
人事評価の結果が来たのですが、5段階評価で98%が3て機能してないと思うんですよね。
寝てる職員と休職してる人の分仕事振られてる人が同じ評価ておかしい。
能力が高い人が正当に評価されるべきなのにやる気なくす
プライベート割いて勉強して難関資格も取って色んな仕事こなしてる職員より、仕事中ネット見たり隠蔽体質で懐疑的な目で見られてる職員の方が評価高くなってるのは変じゃねーかな笑
低い目標こなした方が給料上がるなら全く逆効果でむしろ能力高い人やる気なくすよ
正当に人事評価がされず、納得がいかない
自分が子供なのかもしれないけど、人事評価納得いかない、これまでやってたこと否定されてるみたいでモチベ下がる
人事評価が原因で組織や個人に悪い影響が出る
頑張っても頑張らなくても人事評価がほぼ同じ、昇給やボーナスもほぼ同じ。異動の範囲も狭いから、異動先の良い悪いもほとんどない。そういう環境じゃ腐る奴が出てくる。
フィードバックがないから人事評価をやる意味がわからない
人事評価、自分の評価がいくつだったのか全くフィードバックないまま終わった時ありましたw
大体みんな評価普通になる上に良くても悪くても別に何か変わるわけでもないですし、本当なんのためにあるのかわからないですよね、公務員の評価。
担当者によって人事評価が変わる
人の好き嫌いで人事評価めちゃくちゃにしないで欲しい。
人事評価に感情が入っている気がする
人事評価を明確化って難しいのか…
私より仕事か出来るのに評価されていない同僚。
人事評価に感情論が入っている気しかしない。
人事評価が出来レースかどうか見抜くポイント
評価基準が不透明である
人事評価が出来レースである原因で最も多いのが、評価基準が不透明だということ。中には人事評価の評価方法が開示されていない企業も存在しています。
「識学」を使った経営・組織コンサルティングや従業員向け研修を展開する株式会社識学(本社:東京都品川区、代表取締役社長:安藤広大)は、2021年8月26日、「人事評価の“モヤモヤ”に関する調査」を行いました。
人事評価の不満要因|PRTIMES
その結果、自社の人事評価に不満を感じる要因は「評価の基準が不明確」が圧倒的多数であること、また人事評価に不満を感じる方の約6割が「人事評価の結果が給与や待遇にどのように反映されるか知らない」など、人事評価制度そのものが不明確、もしくは明示されていないために不満が生まれていることがわかりました。
まずは評価基準が明確かつ公平であるかを確認しましょう。
確認するときのポイントについて、人事評価の原則をもとにまとめました。
- 特定の人物を有利に評価していないか
- 特定の人物を不利に評価していないか
- 現在の役職、立場、所属する部署、個人に適した評価をしているか
- 経営計画に掲げられた目標や個人別の目標に対して評価しているか
- データや根拠に基づいた数字で、具体的に評価しているか
- 評価項目や評価の内容が、評価される側から見て理解しやすいか
- 評価基準が主観や推測、社内での上下関係に影響されていないか
- 評価者が公平に評価するための教育が行われているか
- 評価基準を社内や社員に開示しているか
といったポイントをおさえてください。
実績と評価がかけ離れている
人事評価が出来レースの場合、複数の社員が同じ評価、もしくは評価が事実と大きく異なるケースがあります。
スキルや能力、業務内容や立場が異なる社員が一律に評価されていたり、業績を上げているにもかかわらず一定の基準で評価されていれば、出来レースの可能性が高いです。
評価に対するフィードバックがない
人事評価でフィードバックがなければ、出来レースである可能性が高いです。
人事評価制度の目的は企業や個人の成長・改革を目的としています。フィードバックで得られる社員の良い点と悪い点を定期的に確認して業務に反映させたり、目標に対する進捗や改善が確認できないようでは、人事評価が正しく機能していません。
人事評価が出来レースで意味ない…辞めて転職・退職すべき?
オープンかつ公平に行われるべき人事評価で納得がいかない結果をもらったとき、退職や転職を考える人は多いです。ある調査結果によれば、3人に1人と言われています。
≪人事評価の納得性と転職・辞職の関連≫
PR TIMES(~中小企業の転職・辞職に関する調査~)
■従業員の3人に1人が人事評価に納得できず、転職または辞職を考えたことがあることが判明
「不当な評価だから」や「評価に対して給与が少ないから」という回答が目立つ結果に。
ただし、退職や転職を後悔しないよう、先に対処すべきことをご紹介します。
人事評価が低くて不満!会社を辞める前に考えるべきこと
人事評価への不満を申し立てる際のリスクについて
人事評価の制度が法令違反をしている場合、不服申し立てを行うことができます。
評価に対する解釈や認識のズレを冷静に話し合える機会を持つことで、避けられるトラブルもあります。
しかし、訴訟問題に発展した場合、企業と申立人の両者に金銭的コストをはじめとした負担が大きくかかります。
人事評価が不当にあたるのか判断するポイント
不服申し立てがされた事例には
- 法令違反があった場合
- 成果が評価に反映していない
- 人事評価と給与が一致していない
- 人事評価制度が正しく行われていない
という共通点がありますので、該当する部分がないか確認して相談しましょう。
特に法令違反に関していえば、下記の強行規定を守っていない場合に違法と判断されます。
- 均等待遇原則(労基法3条)
- 配置・昇進・教育訓練に関する男女平等規制(雇用機会均等法6条)
- 不当労働行為の禁止(労粗法7条) など
人事評価が不当と感じたときの相談先
まずは上司か人事部に相談しましょう。相談して得られた回答に納得いかない場合は、労働基準監督署の相談窓口で対応してもらえます。
自分の本当の市場価値の見つけ方
人事評価が正しく行われず、転職を希望する場合は、自分で自分の価値を見出しましょう。
まず市場価値が高い人材とは一般的に、「企業が求めるスキルや能力を持つ人材であること」が重要です。しかし、一定の基準で測れるものでもなく、需要と供給によって左右されます。
なので、もし自分の本当の市場価値を見つけたいならば、以下のステップを試しましょう。
まず転職サイトや転職エージェントで、自分の知識やスキル、経験や強みを総合的に判断して「適正年収」を試算しましょう。
またこれまでの業績や達成した目標などを客観的に整理し、それらが市場にどのように影響しているか分析もしましょう。
自己分析により、自分に適した市場でどのような価値を提供できるか把握できます。
適正年収を試算するときは、業界や職種ごとの平均給与と比べたり、同年代の人や同じスキルを持つ人とも比べることが大切です。
市場における自分の価値を適切に評価したり、年収をアップさせるための市場はどこなのかといった目安がつきます。
転職サイトや転職エージェント以外に、SNSでも情報収集できます。企業のビジネスモデルを探り、アピール材料に使うなど、積極的に調べていってください。
市場価値を高めるためには、スキルや知識を向上させることが大切です。自分の弱みや市場で求められるスキルを磨くことで、市場価値をさらに向上させることができます。
具体的に取り組めることといえば、
- 主体性を持って工夫しながら成果を出す
- チームや組織の連携に貢献する働きを心がける
など、業界に関する知識や資格取得だけでなく、問題解決能力やコミュニケーション能力など、社会人に適した能力も十分に身につけておきましょう。
これらのステップを踏むことで、効率よく自分の本当の市場価値を見つけることができます。市場価値を把握し、適切な評価を受けることで、自分のキャリアをより良い方向に導くことができるでしょう。
人事評価Q&A
人事評価に関して想定される疑問や悩みについて、答えとともにまとめました。
人事評価シートには何を書く?書く時の注意点
人事評価シートは客観的な視点で、できるだけ簡潔に書く必要があります。思った以上に時間と手間がかかるため、効率的に書くために以下のポイントをおさえて書きましょう。
評価対象となる期間中に達成したことや実績を書く場合
自分の業務内容をふりかえるとネガティブにとらえてしまうことが多いですが、人事評価シートに書く際はポジティブな表現を使うことを心がけましょう。
例えば期間内に目標達成できなかったことがあれば、失敗点や課題を分析し、改善策と一緒に書くべきです。
自分をアピールする場合
目標に対してどれくらい貢献できたか自己評価してアピールするときは、自分の行動によって顧客や組織にどんな影響が出たかという視点で書きましょう。
目標設定を書く場合
人事評価シートで目標を設定する場合、SMARTの原則にならって決めると効果的です。
- Specific(具体的でわかりやすい)
- Measurable(数字で測定できる)
- Achievable(達成できる)
- Relevant(関連性がある)
- Time-bound(期限がある)
「売上げを10%上げるため、新規の顧客獲得件数を5社達成する」など、実際の業務内容にそのまま活かせるように、現実的な数字で落とし込みましょう。
目標達成が数値化しにくい職務の人はどうすればいい?
法務、人事、経理など、企業の管理部門に属している人は目標設定が数値化しにくいです。その場合は、
- 過去と比較してどうだったか
- 達成までの条件に対してどれだけできたのか
ということに注目して設定するといいでしょう。
例えば経理職の場合、
- 経費削減にどれだけ貢献できたか
- 目標達成までに必要な各工程で、どれだけ作業時間を短縮できたか
- 人為ミスの回数や発生率をどれだけ減らすことができたか
- 業務効率を上げるためどんな工夫ができたのか
など具体的な数字で設定できる部分はしましょう。
人事評価の最低ランクは?
5段階評価でD、1です。
評価段階 | 評点 |
S | 5 |
A | 4 |
B | 3 |
C | 2 |
D | 1 |
人事評価でSランクに入る人は何割?
企業によって分布が異なるため、Sランクとして評価される人の割合は決められていません。
例えば国家公務員の人事評価のSランクは5.8%だというのがわかっており、約58万人(H29時点)中、約3.3万人にあたります。
国家公務員(一般職員)の現行の人事評価制度は2009年度に導入されたものだが、総務省が2013年に実施した調査では、S・A・B・C・Dという5段階の能力評価であるにもかかわらず、Sは5.8%、Aが53.8%、Bが39.8%、Cが0.5%、Dが0.1%であったという非常に偏った結果であった、と報じられた。
東洋経済ONLINE
人事評価が高い人はどんな仕事をしている?
人事評価が高い人は一般的に以下の共通点があります。
- レスポンスや決断、行動が早い
- コミュニケーション能力が高い
といった実務の能力が高いと同時に、周囲もそれを認めざるを得ない訴求力の高さを持ち合わせています。
なので、顧客や社内から期待されることを的確に把握し、それに見合った結果を残せる人になる必要があります。
例えば
- スケジュールやタスクの優先順位をつけ、段取りよく行動できるようになること
- 見積もりや下準備を怠らず、時間内に高いパフォーマンスを見せること
- 他人を味方にする優れたコミュニケーション力と人間性を持つこと
- 柔軟な発想であらゆる状況を乗り切る力をつけること
- 学ぶ姿勢を大事にして、向上心を忘れない人間になること
など、状況に応じて仕事をしていきましょう。
人事評価が高すぎるとまずい?デメリットまとめ
- ポジティブに自己評価したのに高すぎるから修正しろと言われた
- 上司から予想より高く評価されてしまったため、昇進してしまう…
- 顧客や上司から純粋に評価されたのに、社内で非難された
- 自分の評価を高く見積もっても低く見積もっても怒られる
上記のように、本来高い評価を受ける方がいいとされても、自己評価や上司からの評価にふりまわされる事例があります。
部下が昇進試験に落ちたときはどう接したらいい?
部下の性格や状況によって対応が異なるので万能な解決策はないのですが、参考になる事例をまとめました。
- 「試験お疲れ様」と、まずは労う言葉をかける
- 「毎日〇〇を頑張っていたね」と、試験への努力を認める言葉をかける
- 「落ちたことを気にしない方がいいよ」といった、価値観を押しつけるような言葉はかけない
- 結果の捉え方や視点を変える言葉をかける
- 結果を分析して一緒に次の目標設定をする
- 通常と変わらない言動をする
- 時間を長く割いて相談に乗る
まとめ
今回は実際に人事評価が出来レースだった方々の体験談と、人事評価において出来レースを見抜く方法をまとめました。人事評価の結果に納得がいかない場合の参考にしてください。
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